簡野育英会のあゆみ
漢和辞典『字源』
 道明先生は、多くの著書・漢文教科書を執筆されていますが、その終生の大著は漢和字典『字源』です。その序文「字源編纂の縁起」(下記参照)には、西洋学問に対し東洋学問が日に日に衰えていくことを危惧して、正確な知識を収録した字典を刊行しようとしたこと、当時、辞書の刊行は複数の学者が共同で監修をするのが一般的であったのに対し、道明先生は、大字典の完成という責任を負うため、職を辞してまで独力での字典執筆を決意されたことが書かれています。
字源
 そして、着想から実に二十余年、大正12(1923)年、59歳の時に歴史的名著『字源』は完成されました。先生が学者生命を懸けて執筆された『字源』は、掲載語彙の意味が正確であること、出典も確認できること、音訓語彙索引の工夫や、語彙の配列が五十音順(従来は画数順であった)であること等から、発刊以来300版を超えるロングセラーとなりました。そして、現在でも東京大学図書館をはじめ、中国の旧満鉄大連図書館など、多くの図書館に所蔵されおり、唯一の正字、正仮名遣いの字典として、今なお専門家から高い評価を受けています。